「おい!平治!

ぼーっとしてんじゃねえ!

てめぇは鬼にも変化出来ねえ役立たずなんだ!

せめてさっさと蔵の鍵を開けやがれ!」




 いつまで経っても鬼に変化出来ない平治に、京允は手厳しい。




 その苛立ちを八つ当たりするかのように、屋敷の住人を斬りつけた。




「お、おい!?

お前、その人、死んじゃったんじゃないのか!?」




 京允が斬りつけたのは、最後の住人だった。




 それ以外は既に皆殺しにしている。




 鬼の京允が、平治をねめつける。




「死んだから何だってんだ?」




「全員殺したらまずいだろ!

一人か二人は生かしておくはずだったんじゃないのか!?」




 生かしておく、とは言っても、虫の息だ。




 誰か来たところで処置なしの状態になる。




 しかし、それでも平治にとっては、皆殺しにするよりは精神的苦痛が少なかったのだ。




 例えそれが偽善と分かっていても・・・・・・。




 必死になって詰め寄る平治の肩に手を掛け、正六が言う。




「なあ平治。

今はもう、そんな段階じゃないんだよ」




 平治が怪訝そうな眼差しで正六を見る。