だが、三人が呆然としたのは、神々しさのためばかりではない。




 九尾の白狐は、その口に鉄燎をくわえていた。




 鉄燎が既に絶命しているのは明らかだった。




 その首に、藤内の鋭い牙が突き刺さり、バキバキという嫌な音が聞こえていたからだ。




『お前達も、こうなりたいか?』




 藤内が、三人の脳裏に話し掛ける。




 口に鉄燎をくわえているのだから、声が出せないのだ。




 バキバキと、鉄燎の首を噛み砕きながら、黄金の瞳で三人を睨みつけた。




 ひぃ、と京允が情けない声を漏らす。




 そして、声を震わせながら絶叫した。




「逃げろ!

逃げるんだ!」




 三人共、一目散にその場から逃げ出した。




 三人が居たのは、豪商の屋敷でもなく、森でもなく、ただの原っぱだった。




 そんなことにさえ気付かぬ程、三人は我を失っていた。




 三人を追い立てるように、藤内の哄笑が響いていた。




 夜のしじまを引き裂くように・・・・・・。