ある豪商の屋敷の前まで来ると、鉄燎が目で合図を送る。




 それに京允が頷き、最後尾に居る男を見た。




 最後尾に居たのは平治だ。




 平治が怖ず怖ずと進み出る。




 一番に塀を攀じ登り、誰も近くに居ないことを確認してから他の者に合図を送る。




 そして、鉄燎達が殺しをしている間、平治が蔵の鍵を探し、蔵の鍵を開ける。




 この二つが平治の役目だった。




 殺しを嫌い、強盗としては役に立たない平治に、無理矢理あてがった役目だ。




 もっとも、偵察なら他の者にも出来るが、錠前破りはそうもいかない場合があった。




 蔵の鍵が見付からない場合も多いからだ。




 そうなると、鍵を使わずに開けるしかない。




 鉄燎達なら、扉をぶち壊すことも出来るだろう。




 しかし、さすがにそれは、大きな音をたてることになり、役人に見付かるのが早くなる。




 それでは、金を持ち運ぶ暇が無くなってしまう。