藤内は、夜更けの閑散とした城下をのんびりと散歩していた。




 当たり前だが、少年の姿をした者は他に誰も居ない。




 それどころか、大人の姿も無かった。




 城下はひっそりと、寝静まっていた。




 そんな中、藤内が鼻をひくつかせる。




 そして、眉間に皺を寄せた。




「鬱陶しい奴らだ!」




 吐き捨てるように言う。




 藤内の鼻は、妖の匂いを捉えていた。




 それが、ここ最近、花鵠城下を騒がせている強盗団だと分かった。




 花鵠城下は、藤内にとって縄張りのようなものだ。




 そこで好き勝手されるのは愉快なことではない。




「少し、からかってやるか」




 そう呟くと、藤内は一人ほくそ笑んだ。