翌日、甚兵衛は町に買い出しに出掛けた。




 用事を済ませて帰っていると、何者かがつけて来ていることに気付いた。




 だが、その何者かは、まるっきり素人だ。




 それで甚兵衛は警戒心を解いた。




 危害を加える様子も無い。




 何か用があるのだろうか?




 甚兵衛はそう思い、わざと人気の無い道を選んで通った。




 案の定、その何者かは、周囲に人が居なくなると、甚兵衛に声を掛けてきた。




「すいませ〜ん。

ちょっといいですかあ?」




 その呑気な口調に拍子抜けしつつ振り返る。




 するとそこには、旅姿の巫女が立っていた。




 甚兵衛が怪訝な顔をする。




「私に何か?」




「えっとぉ・・・・・・」




 巫女のほうも困った様子である。




 そして、いきなり一人で誰かに話し始めた。




「おじいちゃん!

ホントにこの人で間違いないの?

もし間違ってたら、あたし、ただの変な美少女よ!」




「誰が、美少女じゃ?

間違いないわい!

げんに、あやつにも儂の声は聞こえておる!」




「えっ!?」




 巫女が驚いたように甚兵衛を見た。