「あ!

・・・・・・いや。

そんな得体の知れない薬師の薬なんて、変な物かも知れないじゃないか」




 平治は、バツが悪そうに言った。




 おせんは、それに哀しげに微笑む。




「仕方ないもの・・・・・・。

今、私に何かあったら、あの子が・・・・・・」




 おせんが心配そうに我が子を見る。




 その時、ふと平治は気になった。




「おせんさん。

旦那さんは今どうしてんだい?」




「この前、死んだわ・・・・・・」




「えっ!?」




 愛娘を見るおせんの横顔に、苦悶の色が浮かんだ。




「きっと、看病してる時にうつっちゃったのね・・・・・・。

でも・・・・・・、あの子にうつすわけにはいかないから・・・・・・」




 おせんがそう言って不意に平治のほうを向いた。




「あの子を、奉公に出そうと思うの」




 おせんは、微笑んでいた。




 だが、平治は、こんなにも哀しみに満ちた微笑みを見たことがなかった。




 胸の内を、激しい罪悪感が逆巻く。




「平治さん・・・・・・。

平吾さんを大切にしてあげてね」




 おせんはそう言うと、愛娘を呼び帰って行った。