「やりたいようにやるからって、家に帰らねえのとは別じゃねえのか?

家に帰ったって――」




「あんな親父に何を言ったって分かるもんか!」




 平治の顔が怒りで歪む。




 だが、断十郎はその表情の奥にあるものを確かに見た。




「平治・・・・・・。

おめぇだって本当は、戻りてえんじゃねえのか?

親父さんのこと、気になってんだろ?」




 断十郎の言葉に、平治がカッとなって睨みつける。




「僕は別に!」




 断十郎は、平治の頑な態度を見て、この時ある可能性に気が付いた。




 断十郎は、平治も平吾の病気を知っているものと思っていたのだ。




「おめぇ、まさか・・・・・・。

平吾のとっつぁんの病気を、知らねえのか?」




「・・・・・・え!?」




 平治が、何のことか分からない、といった表情を浮かべた。




「平吾のとっつぁん、今、流行り病にやられてんだ!」




 その言葉に、平治が凍り付く。