断十郎の言葉に、平治は微かな警戒の色を浮かべる。




 断十郎は、それに気付いた。




 まあ仕方ないところだ、と断十郎は納得する。




 平治は、強盗団の一味なのだから。




「僕に、いったい何の話があるんです?」




 平治が、警戒するように言った。




 断十郎が、今日、平治に会いに来たのは、強盗のことに関してではない。




「おめぇ、家に帰ってんのか?」




 断十郎が、家のことを口にした途端、平治から警戒感が消え、露骨な嫌悪感にすり替わった。




 断十郎が、それを見て、心の中で嘆息する。




「家のことは、もう僕には関係ありませんよ!」




 平治が、吐き捨てるように言う。




「関係ねえってことはないだろう。

今は、平吾のとっつぁん一人じゃあ、大変じゃねえか!」




「関係ありませんよ!

親父は親父の好きなようにやればいいんだ!

僕は僕の好きなようにやりますから!」




 平治は、頑なだった。