疫病が蔓延すると、人心が乱れる。




 人心が乱れると、妖が蔓延(ハビコ)るようになってしまう。




 そうならないように、役人達の見回りで、人心を宥めなければならない。




 しかし!




 肝心のその役人達が、疫病を広めているかも知れないのだ!




 今は、まだ人々に、役人達が病を広める要因になっている可能性については伏せている。




 しかし、いずれはばれるかも知れない。




 このままでは、役人達の見回りを止めざるを得なくなってしまう。




 重元の眉間に、深い皺が刻まれる。




 重元にはこの疫病が、自然発生したものには思えない。




 自然発生したにしては、出来過ぎている。




 ここまでくれば、何者かの、何らかの意図があって画策されたことだと考えるのが、自然だ。




 実際に、既に鬼達の目撃例も、急増し始めている。




「断十郎よ・・・・・・」




 重元が、絶大な信頼を寄せる部下の名を呟く。




「もうあまり、時間が無いぞ・・・・・・・・・・・・」