はぁ、とため息を漏らす。




 道の脇にある祠の隣に、チョコンと腰を下ろした。




 花鶏は、ひざ小僧に頬杖をつき、そのまま、道行く人々をボンヤリと見ていた。




 だが、相変わらず、暗い目をしていた。




 花鶏は、自らの“業”を恨めしく思っていた。




 そんな花鶏の目の前を、旅姿の女が通り過ぎるところだった。




 花鶏の視界に、何気なくその女が入る。




 その瞬間!




 花鶏の表情が見る見る一変した。




 体は微かに震えている。




 ふと気が付くと、女も花鶏を見ていた。




 とても冷たい視線をしていた。




 女が花鶏に近付いて行く。




 まだ若い女だ。




「鏘緋!」




 花鶏の表情が強張る。




 そして、目の輝きは、よりいっそう暗くなった。