花鶏は、特にアテもなく、ぶらぶらと散歩していた。




 今は昼間なので仕事は無い。




 花鶏の仕事は、日が落ちてからなのだ。




 仕事までは、まだまだ間があるから、暇つぶしで町をうろついているのだった。




 夏の陽射しが、容赦なく照り付ける通りを避けて、小路に入って行く。




 花鶏は、暗い目をしていた。




 客の前では、絶対に見せない表情だった。




 その目は、まるで、絶望しか映していないかのように暗かった。




 暗い目と表情で、何か思い悩んでいるのか、心ここにあらずといった風で歩いている。




 そのため、いつの間にか、町から外れ、木々の生い茂る林の中を歩いていることにも気付かない有様だった。




 少々異様な雰囲気の花鶏に、擦れ違う人々は奇異の視線を向けてくるが、花鶏はそれにも気付かない。




 しかし、所々、道に張り出した木の根っこに躓きそうになり、ここでようやく花鶏は我に帰った。