「サテト・・・・・・」




 毛むくじゃらが、ぽつりと言う。




「オ前ニモ死ンデモラウカ。

小娘」




 邪悪な眼差しが、凪を射抜くように向けられた。




 凪は、恐怖のあまり、身動き一つ出来ない。




 しかし、そこへ場の空気を読まない、呑気な声が掛けられた。




「大変申し訳ありませんが、これ以上、ここで人をあやめるのはやめていただきますよ」




 およそ緊迫感のかけらもない口調だったが、毛むくじゃらはギクッとして振り返った。




 すぐ背後に甚兵衛が居た。




「テメエ・・・・・・。

イッタイ何者ダァ!?」




 いつの間にか、甚兵衛の手には、刀が握られている。




 通常の刀よりも短めで、反りがほとんどない直刀だ。




 いわゆる、忍者刀と呼ばれるやつだ。