「モウ一人残ッテイル!」




 そう言うと、毛むくじゃらは、いきなり凪の居る部屋の襖を開けた!




「やば・・・・・・!?」




 咄嗟に逃げようとしたが、もはや時機を逸したのは明らかだ。




 呆然と立ちすくむ凪を、毛むくじゃらが見下ろす。




 凪と目が合った。




 冷酷な眼差しだ。




 その目を見ていると、恐怖で心と体が凍てつくようだった。




 獣と人間を、ごちゃまぜにしたような醜悪な口元が、不意に歪んだ。




 笑っている。




 殺戮の愉悦に酔い痴れた、悍ましい笑いだった。




(誰か、助けて!)




 物心ついてからこれまで、ほとんど他人に頼らず生きてきた凪が、この時は心の底から誰かに助けを求めた。