障子をそぉっと開ける。




 中では男と女が寝ていた。




 凪は、蔵を狙って侵入したのではない。




 蔵に入っている千両箱なんか、とてもじゃないが重過ぎて、凪には持てない。




 凪が狙っているのは、普段の生活で遣うために置いてある金だ。




 だが、小判だと、凪のような少女が持っているのはおかしいので、出来れば小銭がいい。




 と、凪は考えていた。




 もっとも、小銭を盗むためにこんな風に侵入するのは、甚だ効率が悪く、リスクも高かった。




 だから、凪は、昼間にスリもやっていたのだ。




 リスクを犯してでも、屋敷に忍び込むのは、こういった大店(オオダナ)に対する仕返しの意味もあるのかも知れなかった。