凪が、キョロキョロと周囲を見回す。




 誰も居ないのが分かると、悪戯っ子のように、ニッと笑った。




 そして次の瞬間、鮮やかな身のこなしで、塀の上に登った。




 かなり手慣れた様子だ。




 塀の上で身を低くして、用心深く庭の様子を探る。




 誰も居ないのを確認すると、音も無く庭に降り立った。




 庭に植えてある木々の陰を伝うように、屋敷に近付く。




 これだけ大きな屋敷だと、小間使いやら奉公人やらが居て、それなりの人数が住んでいるだろう。




 だが、幸いにも、皆、ぐっすりと寝入っているようで、起き出してくる気配は無かった。




「ま、起きてきたところで、凪には関係無いけどね!」




 凪は小声で呟くと、屋敷の中に侵入した。