恐らく、10歳かそこらだろう。




 痩せぎすの少年が、夕暮れ時を迎えつつある花鵠城下を歩いていた。




 身なりは裕福には見えない。




 とりあえず、何でもいいからボロを身に纏っている、といった感じだ。




 そして、目的地が有るのか無いのか分からないような足取りだった。




 だが、迷ってる風ではないので、この辺りには詳しいようだ。




 もっとも、このくらいの年齢の少年が、こんないでたちで旅に出るわけはないので、この辺りに住んでいるのだろう。




 その少年が、不意に足を止めた。




 目の前にある、飯屋を見ている。




 そして、獣のように鼻をくんくんと鳴らした。