「膩玖・・・・・・」




 背後の者に声を掛ける。




 振り返るまでもなく、何者が来たのか、秀郷には、瞭然だったのだ。




 膩玖が、秀郷の傍まで進み出る。




「膩玖よ。

花鵠國の様子はどうじゃ?」




「は。

どうやら、流行り病が、徐々に蔓延しつつあるようにございます」




 ふむ、と秀郷は、その醸し出す雰囲気からは意外な程、繊細に見える長い指で、自らの髭の生えた顎を摘む。




「重元めも苦労しておるであろう・・・・・・」




 遠くを見ながら、秀郷が、独り言のように言った。