献鳬國、献鳬城。




 献鳬國と花鵠國を治める櫛笥 秀郷の居城だ。




 その天守に、秀郷は居た。




 時代は平穏になって久しいが、まるで、戦国乱世を生きる武将のように、精悍な雰囲気を醸し出している。




 猛禽類のような鋭い眼差しで、城下を眺めていた。




 だが、その表情は、何事かを思案している風であった。




 その時、不意に、背後に人の気配が現れた。




 秀郷は、だが、振り返ることすらしなかった。