「断十郎の旦那!」




 断十郎は、城下に帰って来ると、背後から声を掛けられた。




 少し鼻声のようなその声は、なかなかに艶っぽい。




 それで、断十郎は声の主が誰なのか、すぐに分かった。




 振り返ると、そこにはなまめかしい女が立っていた。




「花鶏(アトリ)かい?

どうしたぃ?

まだ仕事には早い時間だろう」




 花鶏と呼ばれた女は、悩ましげな姿態で妖艶に微笑む。