「おりょうちゃん、お代ここにおいとくぜ」




 店の奥に、そう声を掛ける。




 奥のほうから聞こえてくる、「毎度ぉ〜」という快活な声を背に受け、店を出た。




 辺りは既に、夕日で朱に染まっている。




 断十郎は、胸騒ぎを感じた。




「取り越し苦労なら、いいんだがな・・・・・・」




 ポリポリと頭を掻きながら、断十郎は、城下へと戻って行った。