そして、さてと、と立ち上がる。




「おや?

どこに行きなさる?」




 庄屋が、怪訝そうに薬師を見た。




「これから、山へ行って、薬草を取って来ますよ」




 やはり、薬師は、笑顔で応じた。




 それに対して、庄屋の表情が曇った。




「それは、止したほうがいいんじゃないかのぉ。

もうじき、暗くなる。

暗くなれば、山のほうには狼や山犬が出て来んとも限らん。

それに暗ければ、肝心の薬草も探せんだろうに」