花鵠國の西部には、日幟(ヒシ)川があった。




 花鵠國で、最大の川だ。




 例年なら、夏になると、涼を求めに人がやって来るのだが、今日のような天気だと、さすがに人の姿もまばらだった。




 それでも、元気な子供達が、肌寒い中、川の中に入って遊ぶ姿も、ちらほらと見受けられた。




 旅の男が、そんな子供達の様子を、河原に佇む木の幹に腰掛け、ぼんやりと見ている。




 小柄な男だ。