若菜姫の書物好きは紅の国に知らぬものがいない程であった。
だがそれが一体何だというのだろう。

「そこでだ。
いつもはその量ゆえ書物庫へ出向くのだが、屋敷の中で読みたいと常々申していてな。
そなたなら力もある。
どうだろう、書物庫から若菜の読みたい書物を運んでやってはくれまいか」

今は大きな戦もないしな、と殿は微笑んだ。

「それに…」と言いかけたが、その先は表情を落とし黙り込んでしまった。

俺は少し戸惑った。

戦で武勲をあげるのがお役目であると思っていたが、そんな小間使いのようなことをさせられるとは。