使者が帰ったのち、どこからかか噂が広まってきた。

ついに翠の国が本格的に攻め入ってくるというものだった。

どうやら翠の国にいる陰陽師が、『ヨロイ』を完成させたらしい。

人の30倍も戦闘能力の高い、四足歩行型の大型搭乗兵器。

一気に戦局がひっくり返るほどの兵器だ。

確か翠の国には、蘭(ラン)という年端のいかぬ幼女がいたはず。

穢れを知らず、純真無垢に育ったものでないとヨロイには乗れない。

ヨロイは、珠(オウジュ)と言われるものがヨロイ乗りと精神を結合させている。

精神にブレがあれば一気に弾け、ヨロイと結合出来なくなってしまうのだ。

人を殺したことで精神を揺るがせてはならない。

後悔も、悔恨も、感じてはならない。

だから、善悪のわからない子どもを乗せる。

敵は悪いやつ…悪いやつは殺していい…殺せば、褒めてもらえる──と刷り込まれた、純真無垢な子を。