「どうなされました?」 俺は慌てて姫の元へ戻った。 「どこか痛むのですか?」 俺の声に、姫はうつむいたまま首を振った。 「いいえ……いいえ……違うのです……」 なんでもない。 大丈夫。 そればかりを口にする若菜姫に、俺は思わず強い口調で言った。 「なんでもなくて涙が出るわけ、ないでしょう。 私はそんなに頼りになりませんか!?」 びくん、と姫の体が揺れ、わっと俺にすがりついた。 「違うのです……私、私……お嫁になど行きたくないっ 私は……鎖迅様をお慕いしているのです…っ」