俺の祝いの言葉に、若菜姫は一瞬だけ泣き出しそうな顔になった。 しかしその表情をすぐに消し去り、にっこりと笑って言った。 「……ありがとう」 そう言うが早いか、手元の書物を開いてうつむいた。 俺はいつものように無言で立ち上がり一礼すると、姫に背を向けて戸に手を掛けた。 スッと戸を開くと同時に、後ろからぽたぽたっと音がした。 振り返り、「姫?」と言った俺が見たものは、机に広げられた書物を涙で濡らす姫の姿だった。