「実は……縁談があるのです」

前触れもなく突如そう切り出した若菜姫に、俺は一瞬思考が止まった。

「縁談……ですか」

コクリと頷いた若菜姫は、とても大人びた表情をしていた。

俺は、ああついにこの時が来たか、と思った。

紅国は小さな国で、周りは大国に囲まれていた。

この辺りで一番大きな青羽(セイハ)の国に追従していたものの、最近は翠(スイ)の国からの猛襲を受け、国は疲弊の一途を辿っていた。

ここで青羽国の重い腰をあげるためにも、若菜姫の縁談は重要なのだ。