もちろん、姫に恋をするなんて許されるものではない。

俺は家来。それも身分は決して高いわけではなく、本来ならば、このように毎日若菜姫にお会いすることなどない。

殿がどうして俺を姫の書物係にしたのかはわからないが、明日からいらないと言われたら、もう姫にまみえることなど出来ないであろう。

だから俺は自らの気持ちを押し隠した。
ただ、姫のお顔を見て。
ただ、姫のお言葉がきけたなら。

それだけでよかった。