十五分位歩くと、ベンチがあった。

ふと思い出したのは春休み前のあの夜の事。

何がしたい訳でもないけど、座りたくなった。


「優人…あそこ座ってもいい?」

「あぁ。ちょっと歩いたしな…。」



ベンチに座ると、時間が止まったかのように落ち着いた。

今更だけど、ベンチに座るの好きになった。

きっと優人に出会ってから。


優人は好きかな…?

そんな事を考えた途端、視界が塞がれた。



塞いだのは優人の顔だった。

それがわかるとアタシは目を閉じた。

うっすらとかかった霧の中で、アタシ達は静かにキスをした。