ホッとしてコーヒーを一口飲むと、タイミングよく香織が俺を呼んだ。


「先生…ココ分かんない…」

「私も…」

篠原と二人して数学の教科書を開いていた。

…相変わらずナイス演技だな。

「ん~…どれだ?」

俺も平然として二人のもとへ行った。


香織の教科書には付箋が張ってあって、メモが書いてあった。

俺へのメッセージ。

年甲斐もなくワクワクしながらそれを目読した。

『久々だから長く居たいんだけど…用あるからコレ終わったら帰るね。』

「えっ?」

思わず声が出てしまった。


少し離れた席にいる佐伯も俺の声に反応してこっちを見てる。

香織と篠原は少し焦ったような顔でこっちを見てる。

まずい…

「きょっ…今日やったばかりだろ、そこ。」

慌てて適当に誤魔化した。


佐伯には通じたみたいだ。