「そんなことよりも…」

アルテミアは、大月学園を見下ろしながら、僕に逆に質問した。

「オウパーツをつけた4人を始末することは、簡単だろ?」

「そうだね」

僕は頷いた。

「じゃあ…なぜしない?」

「…アルテミア」

僕は素直に、心の内を話した。

「オウパーツはなぜ…人間に寄生するんだろうな…」

「知るか…」

「そこに、オウパーツの真実があるのかもしれない」

「は?どういう意味だ?」

僕は、ピアスの中で目を瞑り、

「もしかしたら…オウパーツは、人間の盾になるかもしれない。それに…」

ゆっくりと目を開くと、

「もしオウパーツが、ライの手に渡ったとしても…僕とアルテミアがいれば、負けないよ」

自然と微笑んだ。

「ば、馬鹿!」

しばらく間を開けてから、アルテミアは顔を真っ赤にしながら、大月学園から一気に離れた。

「い、行くぞ!」

気を取り直したアルテミアは、襲われている人々を救う為に、日本地区から離れた。



その様子を気を消して見ていたのは、リンネだった。

少し離れた山の上から見送りながら、微かに唇を歪めた。

「リンネ様…」
「これで、よろしかったのですか?」

リンネの後ろには、ユウリとアイリがいた。

「…」

無言のリンネに、アイリはさらに頭を下げると、

「オウパーツは、ライ様に献上する…大切なもの。それを、あのような者達に任せては…」
「刈谷がいる。あやつが、何とかするだろう」

リンネはすぐに、言葉を遮った。

「リ、リンネ!?」

驚き、顔を上げた2人を見ずに、リンネは言葉を続けた。

「オウパーツ…。あのようなものは…王に相応しくない。しかし、それでも、必要ならば…」

リンネはにやりと笑い、

「容易に奪える」

「リンネ様…」

リンネの最後の言葉に、ユウリとアイリはすべてを悟った。

「我らは、リンネ様の炎。すべては、貴女のお心のままに…」

「フン」

リンネは鼻を鳴らすと、アルテミアが去った方を見つめた。

「まだまだ…時代は変わらない」

リンネは、ゆっくりと視線を外した。