「待ってくれ!」

僕の提案に、高坂が口を挟んだ。

「この島には、先輩が封印されている!島を沈めたら」

狼狽える高坂を見て、僕は目を瞑り、地下にある休憩所を探った。

「なるほど…オウパーツを身につけている人を凍り付けにして、封印しているのか…。だけど!」

僕は目を開き、

「彼は、死ぬ間際の痛みを抱えたままで…凍り付けになりながらも意識を保っている…。そうか!オウパーツは生きた人間にしか寄生しない!それに、凍り付けにすることで、オウパーツが行う回復能力の発動を抑えているのか」

「な!」

ただ探っただけで、そこまで理解した僕に、高坂は素直を驚いた。

「仕方がなかったの」

今度は、さやかが目を逸らしながら口を開いた。

「オウパーツは、人の心に干渉する。傷付き、弱っていた森田部長はすぐに、オウパーツに乗っ取られたでしょうから」

その話に、生徒達が無言になる中、ジャスティンとアルテミアは違った。

「赤星。それで、島を沈めるとは?」

「どういう意味かな?彼ごと島を沈めるのか?それとも、彼からオウパーツを外した後、沈めるのかい?」

ジャスティンは、僕の目を探るように見つめた。

少し見透かされているようなジャスティンの言葉に、僕は微笑み、

「勿論、彼を苦しみから救いますよ。それから…」

続けた言葉に、ジャスティンとアルテミアも絶句した。

「な!何だと!?」



思いもつかない方法で、オウパーツを森田部長から剥がすと、島とともに封印された。

森田部長が安らかに眠りについた為、合宿所にいた彼の式神…梅も消えた。

合宿所の埠頭から、迎えに来た潜水艦に乗り込んだ為、生き残った生徒達は、島が沈む瞬間を見ることはなかった。


「やるぞ」

上空に浮かぶアルテミアは、六枚の翼を広げると、島に向かって気を放った。

数分後…極楽島は、海上から消えた。

生き残った魔物達が、海の中を泳いで逃げて行くのを、空に浮かぶアルテミアが確認した。

「行くぞ」

アルテミアは頷くと、陸に向かって飛び去った。