ジャスティンは初めて、構えた。

「き、貴様にこそ!あたしの何がわかる!人間に虐げられてきたあたしのことが!」

真由の記憶に、リタであった頃の記憶がリンクした。頭をかきむしり、

「人間は、仲間を平気で差別する!」

涙目で、ジャスティンを睨み付けた。

その言葉に対して、ジャスティンは答えた。

「確かに、人のそういう部分は否定しない!しかしな!」

ジャスティンは地面を滑るように、一歩前に出て、

「お前は、そんな人間だけを知ってるいる訳ではないだろ!お前のことを心から、心配していた人間もいたはずだ!」

ジャスティンの叫びに、真由ははっとした。

魔物に自ら連行される自分を、止めようと必死に手を伸ばす男の姿を…。

(お、お兄ちゃん)

そのことを思い出した瞬間、真由の瞳から涙が流れた。



「女神が泣いている…」

さやかは、2人の戦いを見つめながら、真由の変化に気付いた。

誰もが、真由の心に…人の温かさが少しだけでも戻ったと思った。

目の前にいるジャスティン以外は…。

「そ、そうね…」

真由は頭を垂れ、

「そんな人間もいた…」

呟くように言った。

しかし、すぐに顔を上げると、目の前に立つジャスティンを睨んだ。

「だからどうだと言うのよ!」

ジャスティンの姿が、兄とだぶる。

「そんな些細なことで!あたしが許すと思ったか!」

真由は、ジャスティンを涙目で睨み付けながら、両手を左右に突きだした。

「人は、みんな!死ね!」

巨大な竜巻を発生させようとした瞬間、ジャスティンが動いた。冷静に手刀で、真由の手首を折った。

「何!?」

そして、唖然とする真由の顎を、膝で蹴り上げると、完全に竜巻の発生を阻止した。

「技が発動すれば、防ぎようがないだろうな」

ジャスティンは、顎を天に向け、体を反らしている真由を見つめ、

「だったら、発動させなければいい」

改めてゆっくりと構え直した。

「に、に、人間が!」

体を反らしたままの体勢で、蝙蝠の羽を広げると、真由は空に飛び上がった。