「やったか?」

蹴りを止められながらも、理沙は…九鬼の蹴りが決まったことを確信していた。

しかし、月光キックの光が消えた時…理沙は言葉を失った。

真由に当たったのは…九鬼の右足の膝から下だけだった。

「ま、真弓!」

「あははは!」

真由は理沙を投げ捨てると、九鬼の右足を掴み、消滅させた。

「これで、得意の蹴り技は出せないわね」

「く、くそ!」

真由の足元で、右足から血が噴き出す九鬼の姿があった。

「せ、生徒会長!?」

驚く高坂を、簡単に足を震わすだけでふっ飛ばすと、真由は…足元で痛みに堪える九鬼を見下ろした。

咄嗟に、ムーンエナジーが傷口を覆って止血したが、足がなくなった事実は変わらなかった。

「まずは…一匹」

真由は嬉しそうに笑いながら、九鬼を踏み潰そうと足を上げた。

「真弓!」

立ち上がろうとした理沙は、足に激痛を感じた。先程、蹴りを受け止められた時に、足首を折られていたのだ。九鬼程ではないが、理沙も攻撃能力を奪われていた。

「さようなら…生徒会長」

一気に足を下ろそうとした瞬間、真由は横から衝撃を加えられ、ふっ飛んだ。

「エル君…。手当てを」

「は、はい」

九鬼のそばに、日本地区の人間とは明らかに、彫りの深さが違う女が駆け寄った。

「え」

そして、真由がいた場所に立つ男。

草原や周りにいた…誰もが、いつ2人が現れたかわからなかった。

「な、何者だ!」

それは、女神である真由も同じだった。

「なるほどな…」

男は、真由の顔を見て、納得した。

「き、貴様!名乗らんか!」

真由は突然2人が現れたことよりも、攻撃を受けた部分が、痛んでいることに驚いていた。

「大した名前ではないのだけどね」

軽く肩をすくめた後、男は徐に…その名を口にした。

「ジャスティン・ゲイ。単なる道に迷っただけの人間さ」

そして、にっと笑って見せた。