「ば、化け物が!」

忍者は手首に布を巻き付けると、腰につけていた小太刀を片手で抜いた。

そして、そのまま…女に向かって突進したが、途中で細切れになった。

「うおおっ!」

結界を越えた第二陣が、ほぼ壊滅状態になった仲間達を見て、思わず勢いが止まった。

「…」

口をつむぎ、状況判断に走る。

「か、風に…気をつけろ」

両足を切断され、地面に仰向けになっていた第一陣の生き残りが、声を絞り出した。

「風?」

火炎放射器や、マシンガンを持った忍者達は、火の海になった地面の向こうに目を凝らす。

「か、かまいちだ…。炎は放つな!風上に逃げろ…」

それが、両足を切断された忍者の最後の言葉になった。

「伝令!」

火炎放射器を下に向けた忍者が、叫んだ。

「全員、風に気をつけろ」

「無理よ」

忍者達の真上から、声がした。

「!」

忍者達が、顔を上げた瞬間、真上から風が吹いてきた。

頭の天辺から、爪先まで赤い線が走ったと思ったら、血が噴き出した。

「誰も逃げれない!」

風は上下左右に吹き…まるで球体のようになっていた。

その中心にいるのが、真由だった。

「あたしは、女神ソラ!人間を殺す為に生まれた!」

風の球体は、結界に触れるギリギリまで大きくなった。

その為に、結界を越えると同時に、忍者達は細切れになった。

「人間は、許せない!生きる価値はないの!」

真由の脳裏に、身に覚えのない記憶がよみがえる。

自分の肌の色を馬鹿にする人間達の…嘲りと冷笑。

いじめ。

そんな毎日を、過ごして来た。

「人間なんて!」

風は勢いを増し、結界を越えた忍者達を一瞬で、塵にした。

(リタ…)

真由の怒りが、頂点に達した時…感情の向こうから声がした。微かだが…優しい声。

「だ、誰だ?」

その声の主を確認しょうと記憶を手繰った真由の頭に、輝の顔が浮かんだ。

(泣いてるの?)

自分の瞳を覗く…輝の瞳がよみがえる。

輝の目に映る…自分の顔…。