そして、同時刻。

実世界でいう韓国釜山の太宗台の先に、何とかたどり着いた1人の人間と一匹の妖精がいた。

「い、一体…どこまで行くんだよ」

息を切らしながら、海岸までたどり着いた少年は、思わず砂浜に座り込んだ。

「日本地区よ」

少年のそばで飛んでいる妖精の名は、ティフィン。

「日本って?」

「この海の向こうよ」

「ええ!」

少年は、波打ち際に倒れ込んだ。

「ま、マジかよ」

一気にどっと疲れの出た少年の上に、ティフィンは着地すると、

「もう少しよ」

少年の服を掴み、起こそうとした。

「俺は逃げるよりも、戦いたい」

起き上がることを拒否する少年に、ティフィンは軽くキレながらも、一応は優しく言った。

「何言ってるのよ!やつらは、何人いると思っているのよ!あんた1人では勝てないわ!」

「だったら!」

少年は突然、立ち上がった。

「きゃあ!」

転けそうになったが、何とか羽を広げて、空中でバランスを取るティフィン。

「だったら!日本に行ったら、やつらを倒せる!そんなやつがいるのかよ!」

体についた砂を払うこともなく、空中に浮かぶティフィンに顔を近付けた少年に、ティフィンも顔を近付けると、睨み付けた。

「ああ!いるわよ!あんなやつらを簡単に倒せるやつがね!そいつは普段は頼りないけど、魔王よりも強いのよ!」

「ま、魔王より〜つ、強い!?」

驚いた少年は、ティフィンから顔を離した。

「そ、そんなやついるのかよ!」

「いるわ!」

「じゃあ!そいつの名は!」

「赤星浩一よ!」

「…赤星浩一?」

少年は、ティフィンから一歩下がった。

すると、足元を波が打った。

「そうよ!そいつは、日本の大月学園ってことにいるの!あたしは、あいつの仲間だからきっと助けてくれるわ!」

腕を組み、胸を張るティフィン。

「赤星浩一…」

少年は…今度は呟くように言った。

「だから、心配するな!ジェース!」

ティフィンの言葉に、ジェースと言われた少年は振り返り、海の向こうにある島の方を見つめた。