「うん?」

湖を迂回して進む高坂達は、合宿所の方がざわめいていることに気付いた。

「何か来たのか?」

訝しげに湖の向こうを睨む高坂に、

「調べてみます」

そばに来た十六…もとい、舞が頷いた後、天を見上げた。すると、今度は右目が飛び出し、島を包む結界近くまで上がった。それから、アンテナのようなものが突きだし、黒目の部分がズームのように飛び出すと、合宿所の方に向いた。

「何でもありだな」

その様子を見ていた打田は、どんなことがあっても段々驚かなくなっていた。

「…」

映像は直接ダイレクトに脳と、大月学園にいる舞のパソコンに転送された。

舞は布団を被りながら、素早く大月学園のメインコンピューターにハッキングをかけた。

「部長!どうやら、伊賀の傭兵が百人、こちらに派遣されたようです。さらに」

舞はキーボードに、素早く指を走らせ、

「部長!この島!売却リストに入ってますよ!」

驚きの声を上げた。

「何!?」

それを聞いて、高坂は目を見開いた。

「売却って…売られるんですか?」

輝は、顎に手を当てて、考え込むポーズを取った。

「え!」

打田は周りを見て、

「物好きな…」

呆れてみせた。

そんな中…。

「あ、ああ」

一番驚きそうなのに、妙なテンションで納得したように見える梨々香に、高坂は気付いた。

「矢島君」

高坂は梨々香の前まで歩き、正面から顔をじっと見つめた。

梨々香は不自然に目を逸らし、口笛を吹くという…今時誰もやらないリアクションをした。

それを見た瞬間、そこにいた全員がこう思った。

(知ってたな)


輝、打田…そして、舞がそう確信する中、高坂だけはやさしく諭すように言葉を続けた。

「…新聞部は、知っていたんだね」

「へぇ」

素っ頓狂な声を上げ、思わず…自分の顔を見た梨々香に頷くと、高坂はゆっくりと背を向けた。

「みんな…俺は、行くところができた」

そう言うと、ぎゅっと拳を握り締めた。