「行く場所は決まっている」

「ど、どこですか?」

さやかの睨むような視線と強い意志を感じる言い方に、思わず怯んでしまった緑。

さやかは壁から離れると、緑の横を通り過ぎ、腕を組みながら、休憩所にいる人々に話しかけた。

「この島の最西部にある最大の広さを誇る休憩所…いや、結界。そこに眠るものを確保し…」

そこまで言ってから、唇を噛み締め、

「海の底に捨てる!永遠に、見つけることができないようにな」

虚空を睨んだ。

「海に捨てる?」

緑は首を傾げ、

「な」
「何を捨てるんだ?」

言葉を続けようとしたが、それをカレンに遮られた。

「山本可憐…」

呟くように言うと、さやかはカレンを見つめた。

カレンは、浩也のそばから離れると、ゆっくりとさやかに近付き、

「今回の合宿の危険度は、学校行事をこえている。気を探ればわかるが…犠牲者も出ている」

さやかの真横で足を止めると、他のメンバーには聞こえないように囁いた。

「学校側の思惑よりも…あんたの隠し事が知りたいな」

「フン!」

カレンの言葉に、さやかは鼻を鳴らすと、前を向いたまま、

「それを今から、話すわ」

一歩前に出た。そして、休憩所内を見回し、

「みんなは知っているかな?魔王の鎧を」

島に隠された秘密を話し出した。





「お姉様」

島の最西部を目指して歩くアルテミアの前に、頭上から真由が下りて来た。風を纏い、重力を感じさせない動きを見て、アルテミアは目を細めた。

「やはり…貴様か」

「御姉様よりは上手く化けれたでしょ?」

スカートの両端を持って、お辞儀する真由を見て、アルテミアは鼻を鳴らすと、回し蹴りを放った。

「怖〜い」

大袈裟に避けて見せた真由に、アルテミアは軽くキレた。

アルテミアの指先が光ると、電気が走った。

「無駄ですよ」

真由の指も輝き、2人の間で電流がスパークした。

「あたしは、ソラの女神ですから」

クスッと笑う真由を見て、アルテミアは怒りを静めた。