大月学園の生徒が出発した港に、戻ってきた潜水艦を見て、後藤は煙草を吹かした。

「島か…」

ここまで辿り着いたのはいいが…島に向かう方法がなかった。

地図にも乗っていない私有地であることは知っていたが…何とか、ボートを借りてでも向かおうとした。

しかし、町の漁師に止められた。

どうやら、島の付近の海域が、荒れているらしいのだ。

「梨々香のやつ…。場所を教えろと頼んだのにな」

後藤は頭をかいた。

島には結界が張られているらしいので、ここからテレポートするにしても危険であった。

さらに、座標がわからないと、海に落ちることになる。

「一週間後か…」

後藤は煙草を吸い終わると、簡易灰皿にねじ込んだ。

「仕方がない。それまで、別の仕事をこなすか」

後藤は諦めて、海に背を向けて歩き出した。







「うおおおっ!」

勢いよく、一気に転げ落ちた坂を登りきり、輝達からはぐれた場所まで来たが…魔物の死体が転がるだけで、誰もいなかった。

パーティーの誰かの死体がないことを一応確認すると、高坂は息を切らしながらも、胸を撫で下ろした。

「――にしてもだ!俺をほって行くか」

とそこまで言って、はっとして思い出した。

打田を庇った時、輝に湖に向かえと言ったことを。

「まったく!」

高坂は右手の茂みに、目をやった。

緑は深く、奥に何があるかは見えなかったが、先程に舞に探索してもらって、この先に湖があるのは、確実だった。

「あまり安全な場所ではないが、互いを確認するには適している」

念のため、持ってきたカードを発動してみたが、島の現在地は割り出せなかった。

「それでも、信じよう」

高坂は足元を気にしながら、茂みの中に突入した。できる限り、輝達が通ったと思われる道を探す。

最初は、月影の力を使おうか考えたが、やめた。

なぜならば…これは最後の手段だからだ。

つねに、力に溺れてはいけない。

高坂はできるだけ、自らの力で道を切り開きたいと思っていた。