「な、何!?もう出発したパーティーがあるだと!?」

朝食の準備をしていた梅から報告を受けた前田は思わず、声を荒げた。

「はい。えらくお早いご出発でした」

梅は、食堂に膳を並べながら、淡々とした口調で話していた。

式神である梅は、予め言われていたことしか守らない。

今は、大月学園の生徒を迎え入れ、食事を用意し、結界の向こうに送り出す。そして、怪我をした場合、手当てする…それだけであった。

出発する時間は、聞いていなかった。

「あいつら〜勝手をやりやがって!」

前田は、出されたご飯に手をつけることなく、食堂に入ってきた高坂とさやかに目で合図すると、廊下に出た。そして、離れに向かう通路の途中で、足を止めた。

その後を、自然な感じで、2人が追った。

「何かあったのですか?」

少し眉を寄せたさやかの質問に、前田は舌打ちした。

「先に結界を越えたパーティーがいる。その中に、高木真由が含まれている。綾瀬理沙はいるが…。彼女にもしものことがあれば…」

「我々のパーティーも出ましょうか?」

さやかの言葉に、

「そうしてくれるか」

前田は頷いた。

そんな2人の会話をただじっと聞いていた高坂は、口元を緩めると、おもむろに口を開いた。

「一度…確認していきたいのですが…」

高坂は2人の顔を交互に見て、訊いた。

「2人は、高木真由の姉を殺したのが…綾瀬さんだと思っているのですか?」

「え!そ、それは…」

口ごもるさやかと違い、前田はすぐに自分の考えを述べた。

「生徒会長を十字架に磔にした…女神ソラ。その直後に起きた…高木摩耶の飛び降り自殺。私は、何らかの関係があると思っている」

前田は、食堂の方に顔を向け、

「私は、女神ソラなるものが…我が校の生徒に化けていると思っている」

一度目を瞑った後、高坂の方に顔を向け、

「教師としてあるまじき考えだが…綾瀬のことも疑いの人物にいれている」