「フッ」

そんな真由の冷笑に、高坂も笑みで返し、

「そんなことはないぞ」

親指を立てると、後ろを指差し、

「あそこに妖精がいる」

梨々香のテーブルの上にいるステラを指差した。

「ゲッ!梨々香!」

輝は、梨々香に気付き…顔をしかめた。

「…そうですよね」

そんな輝の驚きを無視するように、真由はカップに手を伸ばした。

「?」

理沙は眉を寄せた。

「人間以外もいますよね」

真由がカップを掴んだ瞬間、カフェの真上…吹き抜けの天井のガラスが割れた。

「危ない!」

その様子に気付いた緑が、叫んだ。

「チッ!みんな!テーブルの下に隠れろ!」

高坂も気付いており、カフェテラスにいた人々に向かって、叫んだ。

「ひぇ〜」

輝は慌てて、テーブルの下に潜り込んだ。

「くそ!」

緑は、身に隠していた木刀を取り出し、回転させて投げつけた。落ちてくるガラスの破片で、大きなやつを狙う。

「ステラ!」

梨々香も逃げることなく、後ろに飛びながら、上空に向けて、銃をぶっ放った。

「危ない!」

テーブルの下に隠れようとした高坂は、突っ立ている子供を発見した為に、潜り込むのをやめて、子供の方に走った。 そして、子供を抱き締めると、身を丸めて、ガラスの破片から守る。

砕けて細かくなったガラスの粒が、高坂の背中に降り注ぐ。

「大丈夫か!」

高坂が顔を上げ、状況を確かめる。

「大丈夫です」

輝は、テーブルの下から這い出した。そして、その次の瞬間…絶句した。

真由と理沙は、何事もなかったかのように…普通に席に座っていた。

「!?」

そして、輝がいるテーブルの周りだけ、ガラスの破片がまったく落ちていないのだ。

「どうなっているんだ?」

床を見回し、考え込もうとする輝のそばに駆け寄ってきた緑が、叫んだ。

「何をしている!気を抜くな!」

「え?」

輝が顔を上げると、騒然としたショッピングモール内の風景が目に飛び込んできた。
逃げ惑う人々の悲鳴が、建物内に響き渡っていた。