「…」

無言で、魔界のジャングル地帯を歩くジャスティン。

昼間でも、夜でもお構い無くただ…黙々と歩く。

真っ暗な真夜中も、ジャスティンを止める理由にはならなかった。

魔物や動物の息吹きも、気にならない。不安から来る幻聴も、聞こえるはずがなかった。

やたらと、心が落ち着いていた。

暗闇の谷間を降り、底に流れる川の中にある岩場を飛んで渡りながらも、滑ることもない。

ほぼ心を無にしていたジャスティンの足を止めさせたのは、昇る太陽の光だった。

日の出の強烈な光に照らされて、足下の川面がきらきらと輝きだすと、ジャスティンは振り向き、目を細めながらも、太陽に頭を下げた。


闇から救ってくる唯一の存在。

ジャスティンは、朝日に感謝しながら、心の中で考えていた。

(毎朝…日の出を見ることができたら…人間は、考え方を一変するだろう)

ブルーワールドと実世界の神の概念は違う。しかし、昇る太陽は同じである。

闇を消してくれる太陽の無償の行為に、感謝することだろう。

(太陽こそ…究極の愛だ)

地球にいる人間以外のすべての動物、植物に降り注ぐ暖かい日差し。

それに、直接見れないというのもいい。

そこにあるのがわかりながらも、易々と見つめられない。

無償の光と尊さ。

(神とは、こうあるべきだ)

ジャスティンがフッと笑った時、微かな魔力を川岸から感じた。

(うん?)

殺気もない。しかし、明らかに、自分に向けられている視線に気付いた。

ジャスティンは五メートルくらいの川幅のちょうど真ん中にある岩に立っていた。そこから、助走もつけずに、ジャスティンはジャンプした。

川岸に着地すると、視線を向けている相手を探した。

(人間?)

ちらっと見た瞬間、人間だと思った。

しかし、特徴的な長い耳と…漂う魔力から、人間ではないとすぐに判断した。

(女…の)

ジャスティンは、目を細め、

(まさか!?エルフか!)

数秒後…驚愕した。