「うん?」

さらに、首を傾げるティアナは、立ち上がると、追い付いたジャスティンに顔を向けてきいた。

「魔物は、どうしたの?」

「ク、クラークが相手してます。一緒に戦うと言ったんですけど、先に行けと…」

全力で走ってきた為、少し息を切らしているジャスティンの報告に、ティアナは目を細め、

「そお…」

とだけこたえた。

ジャスティンを先に行かせた真意を、ティアナは汲み取っていた。

「ほんと!あいつは、偉そうで!さっきだって、魔物の攻撃を受けるし」

自分のことを棚に上げて話すジャスティンの言葉を、ティアナはもう聞いていなかった。

「心配いらないわ。彼は、強いから…」

「ええ!」

ティアナの言葉に、ジャスティンは驚き…声を上げた。

ティアナが誰かを強いと認めるなど、初めてだったからだ。

「せ、せ、先輩…」

ジャスティンの声が震える。そして、同じく震える手で、自分を指差し、

「お、お、俺だって、捨てたもの…じゃ…」

「ジャスティン!この人の治療を頼むわ」

ティアナは、震えるジャスティンにカードを押し付けるように返すと、奥に向かって走り出した。

「…え」

受け取ったカードを力なく掴みながら、遠ざかっていくティアナの背中を見つめた。

「報われないな」

剣司は、自分に突き刺さっていたグレイの剣を杖代わりにして、立ち上がった。

「え…」

ジャスティンは、自分よりも少し背の高い剣司の方を見た。

「君は、強いよ。まあ〜俺に言われても、しょうがないかな」

剣司はそう言うと、ジャスティンに背を向けて、来た道を歩き出した。

「俺はもう…先には進めないが、大丈夫。帰るくらいはできるよ」

そして、ジャスティンに向かって、手をあげると、

「あとは任せたぜ。少年」

「で、でも!」

カードを握り締めたジャスティンは、

「じゃあな!頑張れよ」

そう言って去っていく剣司の背中を見て、止めることはできなくなった。