「チッ!」

舌打ちした不動の横を通り過ぎた。

すると、不動の手と足が凍りついていた。

「モード・チェンジ!」

不動の後ろに回った瞬間、ティアナの姿が消えた。

音速を超えたティアナの動きが、不動の凍りついた部分を切り裂いた。

「素晴らしい!」

不動は、自らの手や足を斬られる感覚に思わず叫んだ。

「人間を超えた動きだ!」

ティアナは、不動の体にある小さな種のようなものを探した。

以前の戦いで、それを切り裂いたことを覚えていた。

間違いなく、あれが不動の実体であろう。

不動の体の中を、止まることなく移動していたコアというべきものを、ティアナは目で捉えた。

(あれを斬れば…勝てる)

コアに向けて、一気にライトニングソードを突き出した。

「やはり…私の弱点を知っていましたか」

「な!」

ティアナは絶句した。

「この世のあらゆる鉱石よりも固い…私の核を、傷付けたあなたの剣ならできたでしょうね!私を倒すことが!」

不動は、剣を突きだしたまま…唖然としているティアナに向かって、嬉しそうに笑いかけた。

「初めてですよ!魔王に創られてから初めて!本気になれますよ」

「クッ!」

ティアナは状況を判断して、不動から離れた。

突き刺してはずの切っ先が、まったく刺さらなかったのだ。

「その相手が、人間とは…思いませんでしたが!」

不動の体が、変わった。先程までの揺らめいている炎ではない。

炎を焼く…マグマへと変貌していた。

「私は…ライ様の地獄の業火!灼熱地獄をこの身に宿す!炎の神だ!」

叫ぶだけで、灼熱の息吹が放たれ、周りの空気を焼いた。

「幸いなことに、ここは地下!地脈が近い!」

不動の体が、足下から太さを増していく。

一瞬で倍近くの大きさになった不動は、ティアナを見下ろし、

「楽に死ねると思わないことです」

にやりと笑った。