「クソ!」

ギラに放ったクロスカウンターの負荷は、簡単にジャスティンの拳を砕いていた。

一瞬でそれを見抜かれたジャスティンは、蹴りの構えにシフトした。

「フン」

その様子にサラは鼻を鳴らすと、ギラに視線を移した。

「ギラよ。我らは城に戻るぞ」

「な、何!?」

サラの言葉に驚いたギラは、思わず立ち上がった。そして、サラに向かって、

「我はまだ、あの女とも戦っていない!このジャスティンという男とも、決着はついていない!それだ!」

ギラは声を荒げ、

「ギナムに命じたのだ!こいつらは、我が倒す!だから、兵を出すなと!」

「その命令は、我が撤回した」

サラは、ギラから視線を外し、虚空を見つめながら冷たく言い放った。

「お、お前!そんなことは、我は認めんぞ!」

ギラがサラを睨んだ瞬間、体が跳ね上がった。

「うぐぅ」

口から血を吐き出すギラ。

「我らは、視察に来ただけだ。それに…同じ日に、二度負けた者に、何も言う権利はない」

「サ、サラ…」

「いや…違ったか」

ギラの腹に、サラの拳が突き刺さっていた。

「三度目だな」

サラはフッと笑った。 意識が飛んで崩れ落ちるギラを、片手で掴むと、ジャスティンに背を向けて、歩き出した。

その目の前には、クラークが立ち尽くしていた。

「クラーク!」

ジャスティンは、戦う覚悟を決めた。 まだ無傷であるクラークと挟み撃ちで、襲いかかろうとした。

しかし、クラークは動かなかった。

その横を、サラが通り過ぎていく。

「クラーク!」

ジャスティンの叫びにも、クラークは反応しない。

「賢明だな」

サラはすれ違う時、クラークの耳元で囁くように言った。

「勝てぬと、判断すれば…やめた方がいい」

「…」

クラークは下を向いた。

「我は、ギラとは違う」

サラは前を睨むと、クラークの後ろで翼を広げた。そして、ギラを小脇に抱えたまま、空中に飛び立った。