そんなクラークとは対象的に、ジャスティンはギラの本質を見抜いていた。

「あんた…」

ジャスティンは、ギラの顔を見つめ、

「自分でやったのか?」

目の前に現れた時から、反射的に構えていた右足を少しだけ前に移動させた。

「…」

ギラは、ジャスティンを無言でしばし見つめた後、

「そうだが?」

逆に聞き返した。

ジャスティンは腰を少し屈めながら、

「その気持ち…わかるよ」

フッと笑った。

「わかるだと!?」

ギラの片眉が跳ね上がり、

「小わっぱが!わかったような口を聞くな!」

そう叫んだだけで、口から出た気合いが、ジャスティン達の後ろにある大木をくの字に曲げた。

「クッ!」

クラークの体も、数センチ後ろに下がった。

しかし、ジャスティンだけはびくともしなかった。

「!?」

驚くギラに、少し表情を緩めたジャスティンは言った。

「俺も…同じ気持ちだ!」

ジャスティンの脳裏に、ティアナの前で無様に倒れる自分の姿がよみがえった。

思わず唇を噛み締め、

(俺は誓ったはずだ!先輩とともに、戦うと!)

前に立つギラを睨んだ。

その眼光に、ギラは驚きの顔を浮かべた。

(俺は…弱い!)

ジャスティンは、ギラを睨んだ訳ではなかった。不甲斐ない己を睨んだのだ。自分の弱さを恥じた。

(だからこそ、強くなる)

ジャスティンは、左足を踏み出し、大地を蹴った。

「は!」

気合いとともに全身を捻り、右足を鞭のようにしならせた。

「学習能力のないやつだ。これだから、人間は…」

ギラは左腕を軽く添えるように、顔の横に持ってきた。

先程のように、余裕でジャスティンの蹴りをガードするはずだった。

――パチン。

空気が弾けるような音がした後、ギラの左腕が跳ね上がった。

「な!」

驚くギラの目に、さらに回転するジャスティンの背中が映った。

「は!」

ギラの左腕を跳ね上げた右足が地面につくと、今度はそれを軸足にして、更なる捻りを加えた左足が、高速でギラの顎先にヒットした。