それは、ジャングルの隙間だ。

木々に邪魔されずに、太陽の光が大量に射し込む場所。

つまり、大量の影ができる場所だ。

クラークはやっと、半径5メートル程の草地を見つけた。

「よし!」

その草地に向かって、降下した。

蜂に似た魔物達も追ってくる。

クラークは着地と同時に、腰に下げていた長剣を抜いた。

そして、周りの地面を斬った。

勿論、土を斬るのが目的ではない。

そこに落ちる影が、目的なのだ。

次々に、細切れになった蜂に似た魔物の体が、雨のように降ってきた。

「お前達は、俺の…糧になってもらうぞ!魔神と戦う為のな」

クラークは斬りながら、砦の方を睨んでいた。

先程のギラとの戦いで、完膚なきまでに叩きのめたされたが、収穫がなかった訳ではなかった。

(魔神に…俺の影切りは通用する!)

クラークは、ギラの腕を斬ったのだ。すぐに、くっ付いたとはいえ…それが、首より上だったらどうだろうか。

(懐にさえ入りさえすれば、勝てる!)

クラークはフッと、口許を緩めた。

(その為には…)

向かってくる魔物がいなくなると、クラークは死骸から魔力をカードに回収した。

(俺1人では、無理だ)

懐に飛び込むには、先に隙をつくってくれる相手が必要だった。

(ジャスティン!)

クラークは、ジャスティンのもとへ走り出した。

(俺達2人なら…魔神に勝てる!)

クラークは圧倒的な魔神との力の差を感じながら、一つの光明を見つけていた。

「ジャスティン!」

クラークは共に戦う為に、全力で走った。

人間の為に、戦うという共通の思いと目的を持つ2人。

しかし、2人には決定的な違いがあった。

それは、クラークにはないもの。

ジャスティンには、あるもの。

彼の中にある切ない思いは、決して報われることはないが…彼の行動を導いていた。

ティアナを愛する気持ち。

その気持ち故に、ジャスティンはクラークとぶつかることになる。

それは、まだ数年後のことである。

今はまだ…淡い恋心。

それが叶わぬことも、ジャスティンは知らない。