「俺は、カードを使わないからな」

穴の周りの地面までの距離を計って、ジャスティンは飛び降りた。

「ジャスティン!」

「満タンにして、返すよ」

ジャスティンは、地面にジャングルの枝や木に巻き付いたツルを利用して、落下速度と衝撃を緩和して、無事に地面に着地した。

膝の様子を確認したが、ダメージは受けていない。

「フゥ〜」

ジャスティンは軽くストレッチをした後、前方の茂みの向こうを睨んだ。

「行くか!」

地面を踏みしめると、力をためた。

「ブヒイイ!」

茂みの中から、4つ目の猪に似た魔物が飛び出してきた。

ジャスティンはにやりと笑うと、避けることをしない。

猪が角を向けて突っ込んでくるのをギリギリまで引き付けて、ぶつかる寸前に反転した。

「は!」

猪の真横に立つ位置になったジャスティンは、そのまま手刀を、猪の首筋に叩き込んだ。

次の瞬間、猪の首が飛んだ。

返り血を浴びながら、ジャスティンは立ち上がり、前を向いた。

「お前が…本当の猪だったら、鍋にして食うんだがな」

猪の魔物は、首を跳ねられても、そのまま走り去っていった。

そして、穴の底へ落ちていった。

ジャスティンは血を拭うことなく、走り出した。

「あっ!」

そして、しばらくは走ってから、ジャスティンは気付いた。

「し、しまった!魔力を回収するのを忘れた」

この頃のカードに、魔力の自動回収装置はついていない。

「次…頑張るか」

ジャングル内を疾走するジャスティンは、蜂の大群の一部が自分の方に降りてくるのを確認した。

ジャスティンは、走るスピードを上げた。

そして、降下した瞬間を狙い、蜂に似た魔物に膝蹴りを浴びせた。

「!?」

いきなりの攻撃に、驚く蜂に似た魔物達。体勢を整える間を与えずに、着地の瞬間ばかりを狙い、蹴りを放つ。

しかし、その攻撃も長くは続かなかった。

蜂に似た魔物達は、地面に降りるのをやめて、空中から襲いかかることにした。

頭上に集まる蜂に似た魔物達の行動を見て、ジャスティンは嬉しそうに笑った。