通路上で怯え、互いにぶつかり合う魔物に、ギラはイライラをぶつけた。

「うっとおしいわ!」

ギラの一喝は、パニックになっていた魔物の動きを止めただけではなく、彼らを正常に戻した。

「蜂どもが」

ギラは、何事もなかったように歩き出した蜂に似た魔物に、気持ち悪さを感じていた。

こいつらも、一応は…空の騎士団の末端を担うことになるからだ。

「騎士団の基準を、もっと厳しくした方がいいのではないか?なあ、サラよ」

ギラは、隣にいるはずのサラに訊いた。

しかし、その時には遥か前方を、サラは歩いており…複雑に入り込んだ通路の為、その姿を確認することはできなかった。

「サ、サラ?」

ギラは慌てて、後を追おうとした時、後ろから駆け寄ってくる魔物がいた。

「ギラ様!」

「うん?」

振り返ると、烏天狗が息を切らしながら、蜂に似た魔物の行列を飛び越えるのが見えた。

「どうした?」

「は!」

烏天狗は、ギラのそばに着地すると、跪いた。

訝しげに見るギラに、烏天狗は頭を下げながら、

「この砦に向かって、接近してくる人間がいます!」

「人間?」

ギラは眉を寄せた後、笑い出した。

「ハハハハハハ!それが、どうした!魔力を使えなくなった人間など、どうでもできるだろうが!」

砦の周囲は、樹海のようなジャングルが覆い、念の為に、強力な魔物達を放していた。

魔力が使えたとしても、並大抵の戦力では突破はできなかった。

「まったく…愚かな」

ギラは笑いながら、

「何人で来たのだ?一個師団でも連れて来たか!まあ〜それでも、全滅するだろうがな!」

「そ、それが…」

「つまらん話はよせ!まあ〜」

ギラは頭をかき、

「報告はご苦労だった」

一応誉めると、ギラはサラのあとを追おうと、跪いている烏天狗に背を向けた。

「お、お待ち下さい!」

去ろうとするギラに声を荒らげると、烏天狗は事実を口にした。

「人間の数は4人!やつらは、砦までのあと数百キロに迫っています」

「なに〜い!」

笑っていた顔を、ギラは引き締めた。