「…」

ティアナは、ゲイルの遺体に目をやった。

人知れず自分が弔うよりは、その方が…祖父も喜ぶかもしれない。

「わかりました。よろしくお願いします」

ティアナは振り向くと…数秒頭を下げた。ゆっくりと顔を上げると、男と見据えた。

「しかし!あたしの話はお断りします」

そう告げると、少し早歩きで、白装束の集団の横を通り過ぎていった。

「せ、先輩!」

今までどうしていいかわからず、立ち尽くしていたジャスティンは慌てて、ティアナのあとを追った。

「フン」

部外者である轟は、戦いが終わってからずっと格納庫の端で大人しくしていたが、ティアナ達がいなくなると、彼も外に出た。

「防衛軍か…」

別に名前が変わろうが、人の為に戦うだけだった。政治的配慮など、どうでもよかった。

部外者が格納庫からいなくなると、白髭の男に白装束の集団から一人の女が、一歩前に出た。

「何故…彼女を取り込もうとするのですか?」

女の質問に、白髭の男はフッと笑った次の瞬間、苦しみだし、片足を床につけた。

「長老!」

駆け寄ろうとした女を片手で制した白髭の男が、着る衣装の胸から肩の辺りにかけて、赤い線が染み出した。

「あの女は、監視しなけばならない!」

(あの女は、危険だ)

白髭の男は、唇を噛み締めた。

(やつは…斬れぬはずの我の体を斬った。あの力…)

白髭の男は唾を飲み込み、

(いずれ…王の喉元に届くかもしれん)

冷や汗を流した。

白髭の男の脳裏に…炎の中、ライの首元に剣を射し込むティアナの姿が映る。

(そんなことはさせん!あの女は!いつか!我が殺す!)

「長老…」

心配気に自分を見る女の前で、白髭の男はしっかりと立ち上がると、

「行くぞ!」

入口の方へ歩き出した。

「他の者は、遺体を回収しろ!」

フードを被った者以外に命じた。

そして、先頭を歩き出した白髭の男の口から、黒い霧が少し出たことに…気付く者はいなかった。